【中古住宅】中古住宅を購入する際に気をつけること
中古住宅は新築とは異なり、建築後から年数が経っており、様々な箇所が劣化している可能性があります。また、建物自体の性能としても不透明な部分が多いのも事実です。これらは「安心R住宅」制度を用いた中古住宅であれば、一定以上の性能を持った住宅であることが確認されているので、より安心を得たい方にはこの制度を利用することをオススメします。ですが、この制度を利用するということは、通常の中古住宅よりも多少割高になりますので、極力安く、良い物件を求める方は、ご自身で物件の状態確認を行うしかありません。しかしながら、状態確認は闇雲に物件を見ていても、何がよくて何が悪いのか判断がつかないと思います。そこで今回は、中古住宅を購入する際に、どんな場所をチェックしておけばいいのかについてお話したいと思います。
チェックすべきポイント
中古住宅を購入する際には、建物が元々持っている性能と、それがどの程度劣化してしまっているかを確認する必要があります。具体的には以下のものを確認するとよいでしょう。
- 建物の構造
- 建物の外壁
- 建物の築年数
- 断熱材の使用状況
- 点検口の有無
建物の構造
建物の構造には主に木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)があり、構造によって住み心地も大きく異なってきます。それぞれの主な特性は下表の通りになります。
構造の種類 | 耐震性 | 耐火性 | 遮音性 | 耐久性 | 重量 | 価格 | 工期 |
木造 | △ | △ | △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ |
鉄骨造 | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
鉄筋コンクリート造 | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | △ |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | × | × |
それぞれの詳しい説明は以下の記事でご紹介しています。
構造自体の劣化を見た目だけで判断することは難しいため、建物の構造は性能を判断する指標とし、劣化については他の部分が適切に手入れがなされているかで判断を行うとよいでしょう。
建物の外壁
建物の外壁にはALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)、金属サイディング、鉄筋コンクリート、木質系サンドイッチパネル、窯業系サイディング、ラスモルタル(モルタル塗り)などがあり、鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造ではALCパネルおよび鉄筋コンクリートが用いられ、木造および鉄骨造では鉄筋コンクリート以外の外壁が用いられています。それぞれの主な特性は下表の通りになります。
外壁材の種類 | 美観・外観 | 防火性 | 耐震性 | 耐火性 | 断熱性 | 遮音性 | 耐久性 | 重量 | 価格 | 維持費用 |
ALCパネル | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | △ |
金属サイディング | ◎ | 〇 | 〇 | △ | ◎ | △ | 〇 | ◎ | ◎ | △ |
木質系サイディング | ◎ | 〇 | 〇 | △ | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | × |
鉄筋コンクリート | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | × | △ | 〇 |
窯業系サイディング | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ | △ | 〇 | ◎ | × |
ラスモルタル | 〇 | △ | △ | △ | △ | △ | △ | 〇 | ◎ | × |
凡例:◎非常に高い(軽い、安い) 〇高い(軽い、安い) △低い(重い、高い) ×非常に低い(重い、高い)
それぞれの詳しい説明は以下の記事でご紹介しています。
外壁に関する劣化は外壁の表面の仕上げを適切に手入れを行うことで維持することができます。言い換えれば、適切な手入れが施されていないと性能を維持することができません。従って、外壁の仕上げが劣化しているという事は、外壁自体も劣化してしまっている可能性があると言えます。外壁仕上げ材の劣化具合の簡易的な判定としては、塗装の場合は塗装の剥がれおよび浮きがないか、手で触ってみて白い粉がつかないか、タイルの場合はタイルの剥がれがないか、目地部分やタイル自体にひび割れなどがないかを確認するとよいでしょう。
建物の築年数
鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)
1978年に、宮城県沖地震が発生し、当時はいわゆる「旧耐震基準」を用いて建物が設計されており、家屋に甚大な被害が出ています。この地震被害を受けて、3年後の1981年(昭和56年)6月1日に建築基準法が改正され、「旧耐震基準」が「新耐震基準」に変更されました。この「新耐震基準」は建物の耐震基準を強化したもので、震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7の大規模地震でも倒壊は免れることを基準にしており、「旧耐震基準」は震度5程度の中規模地震では倒壊しないことを基準にしています。
つまり、この「新耐震」と「旧耐震」でつくられた建物には地震に対する安全性に大きな差があると言えます。ただし、この基準は1981年6月1日以降に「申請」が受理された建築物が対象になりますので、この1981年6月1日以降に竣工(完成)した建物であっても注意が必要です。申請から竣工(完成)まで、建物の規模にもよりますが、1年〜2年程度かかりますので、1983年6月以降であれば「新耐震基準」である可能性は高まります。
しかし、工事の途中で工事が中断されていた場合や、工期が非常に伸びてしまった場合などはこの限りではありません。確実に確認をしたい場合は不動産業者などに「建築確認済証」をみせていただくとよいです。この「建築確認済証」の日付が1981年6月1日以降であれば、確実に「新耐震基準」で建築されていると言えます。なお、いくら「新耐震基準」であるからといえ、築年数が古い建物では老朽化している建物も多いため、その点も鑑みて物件選びをするとよいと思います。
木造
木造の上記の「新耐震基準」により耐震性が強化されましたが、1995年の阪神・淡路大震災では「新耐震基準」の木造住宅も多く倒壊しました。そこで2000年(平成12年)6月1日に建築基準法がさらに改正され、木造住宅の耐震基準が具体的に記載されることとなりました。これに伴い、木造住宅の耐震性は大きく向上しています。なお、これらも上記の鉄骨造、鉄筋コンクリート造と同様に、「申請」が受理された日付が重要になりますので、確実に確認するには不動産業者などに「建築確認済証」をみせていただくとよいでしょう。
断熱材の使用状況
断熱材は快適な住環境を構成する上で重要な役割を果たします。そのため、断熱材が入っていないもしくは量が少ない住宅は夏は暑く、冬は寒い住宅になりがちです。特に古い住宅ではこの傾向が顕著であるため、注意が必要であると言えます。断熱材の有無は建築図面や竣工図により判断することができ、また、前所有者が住宅ローンにフラット35を用いていた場合はフラット35の仕様に基づいた断熱材が使用されているため、一定の安心感が得られるでしょう。
点検口の有無
点検口は建物内部の状態を確認する上で非常に重要な役割を果たします。例えば、床下点検口は基礎などの状態を、具体的には木材が腐食していないか、シロアリ被害にあっていないか、また、床下の湿気の状況なども確認することができますし、天井点検口は天井裏の断熱材の状況などを確認することができます。逆に言うと、点検口がないとこれらの点検を行うことが困難になることを示し、竣工後一度も点検、修繕が行われていない場合が高いです。また、現状では特に異常がない場合であっても、居住後に異常が生じる可能性もあり、そんな時に対処を行うためにも点検口は必須のものになります。
まとめ
- 優良な中古住宅を手に入れるなら「安心R住宅」制度を利用する
- 「安心R住宅」制度は若干割高になる
- 価格を抑えつつも優良物件を探すには自己診断が必須
なお、中古物件の中には、リフォームを実施した上で販売されているものがあります。「安心R住宅」制度を用いた物件であれば問題がないのですが、そうでない場合については注意が必要であると言えます。綺麗だからといってリフォーム済みの住宅を安易に購入してしまうと、後悔してしまう可能性があるのです。具体的には、本来は補修や修繕が必要な劣化があっても、表面を綺麗にするだけで不良部分を隠してしまっていることもあります。確かに、リフォームがなされていることは手間を省く上で非常に便利ではありますが、上記のようなリスクをはらんでいるものですので、購入前に十分に検討することをオススメします。
なお、安心R住宅制度のほかに、ホームインスペクションと呼ばれる第三者による検査制度もあります。こちらの制度も非常に有効なもので、以下の記事でご紹介していますので、あわせてご一読ください。