界壁は何のためにあるの?手抜きはあり得るの?

ニュースなどでも話題になりました某社の「界壁」未設置(施工不備・不良)問題。この問題がどんなものであるのかよくわからない、そんな方も多いと思います。

実際に、このブログを読んでいただいている方からもお問い合わせもいただきました。そこで今回は、「界壁」について、どこに必要なのか、またどういった役割があるのかをお話したいと思います。

某社の防耐火性能および遮音性能に関する問題については以下の記事でご紹介しています。あわせてご一読ください。

参考記事:防耐火構造・遮音構造の建築基準法違反について

界壁はどこに必要なのか?

建築基準法ではどう定められている?

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達するものとするほか、その構造を遮音性能(隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
(出典:建築基準法第30条)

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

・・・(後略)

(出典:建築基準法施工令第114条)

建築基準法や建築基準法施工令では上記のように定められています。

具体的には?

上記の内容を簡単に言い換えると、分譲マンションや賃貸マンション・アパートの、隣戸との間の壁を「界壁」にしなさい。そしてその界壁は「遮音性能」と「防耐火性能(準耐火構造)」を持たせ、床(スラブ)から上階の屋根・床(スラブ)や梁などまで伸ばして設置しなさい。と言っています。なお、ここで言う「床(スラブ)」とはフローリングなどの床ではなく、構造体としての床を意味します。

つまり「界壁」とは、隣戸との仕切壁を下から上までしっかりとふさいだものを言い、途中で止まってしまっているものは「界壁」とは言えないのです。

界壁の役割は?

では、界壁の役割とは一体どんな役割があるのでしょうか?上記の建築基準法等で出てきましたが、界壁には「遮音性能」と「防耐火性能」の二つが求められています。

遮音性能

遮音性能はその字のごとく、壁などの遮音能力を示すものです。これは、快適な住生活をおくる上でかかせない性能であり、界壁については下限値が設定されています。

法第30条(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次の表の上欄に掲げる振動数の音に対する透過損失がそれぞれ同表の下欄に掲げる数値以上であることとする。

振動数(単位Hz)透過損失(単位dB)
12525
50040
2,00050

(出典:建築基準法施工令第22条の3)

これがどの程度の遮音性能かと言うと、「やむを得ない場合に許容される性能水準」が設定されています。具体的には、ステレオなどの大きな音は当然ながら、テレビや会話などの音も小さく聞こえてきたり、また、隣戸の生活がある程度わかってしまう程で、この基準はあくまでも最低限の基準であるため、守って当然の水準が示されているということです。なお、建物のグレードに応じて、より高い性能のものが選択されますが、余程コスト重視の建物を除いては、基本的に上記の最低性能が用いられることは少ないと考えられます。

防耐火性能

防耐火性能は、火の燃え広がりを防ぐ性能を示すものです。界壁の場合は、隣戸で発生した火災を一定時間、室内のみでとどめておくことが求められます。また、防耐火性能は大きく分けて「耐火構造」、「準耐火構造」、「防火構造」の3つがありますが、界壁は「準耐火構造※1」もしくは「耐火構造※2」※3である必要があります。

※1 耐火構造:一定時間、火災による火にあぶられた後も構造耐力上支障のある変形,溶融,破壊その他の損傷を生じないもの。
※2 準耐火構造:火災による火に一定時間あぶられても、その時点では構造耐力上支障のある変形,溶融,破壊その他の損傷を生じないもの。
※3 建物を建築する地域などにより異なります。

界壁がないと?

界壁が存在しないと、音がだだ洩れで、かつ、火災時には隣戸への延焼が早まってしまうおそれがあります。また、天井を通じて隣戸とつながっているわけですから、容易に隣戸へ入ることができ、犯罪なども発生してしまうおそれもあり、安全性や快適性がそこなわれてしまうと言っていいでしょう。

界壁の欠陥ってよくあるの?

一般の建築物であれば、界壁自体が存在していないというミスは通常では考えにくいです。通常は建物を設計した段階で、行政等へ「建築確認申請」を行い、各種法などとの適合性を判定します。この時、図面上に界壁が存在していないと「不適」と判断され、差し戻されてしまうでしょう。

そして、工事段階でも設計事務所などの監理者の検査のほか、行政等の検査や消防の検査があるため、適切に設置がなされていないと、当該部分の「工事のやり直し」となってしまいます。したがって、一般の物件であれば差し当たっての問題はないと思います。
ただし、設計図や界壁に関する大臣認定書の記載内容と現物が微妙に異なっているなどのミスはあるとは思います。

なお、これらはあくまでも通常の物件の場合であって、大量に同様の物件を施工する場合などは、話が違ってくるのかもしれません。

つまり、界壁が設置されていないということは何らかの大きな問題があると言わざるを得ません。

まとめ

  • 界壁は共同住宅の隣戸間には必須
  • 界壁は安全で快適な住環境を担保する役割がある
  • 界壁の欠陥は通常では考えにくい

上記したとおり、界壁の未設置はミスなどでは起こりにくい問題で、未設置の物件が大量に見つかるというのは大変に問題のあることと言わざるを得ません。

某社は界壁問題に続いて、防耐火の問題も起こしているようで、企業体質が疑われても仕方のないことかもしれせん。

建物を建てる際に手抜きになりやすい場所を以下の記事でご紹介しています。気になる方はあわせてご一読ください。

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