建物の寿命を気にしたことはありますか?
人の寿命は医学の進歩により大きく伸び、日本人の平均寿命はいまや80歳を超えていると言われています。
では、建物の寿命はどうなのでしょう?
今回は建物の寿命とメンテナンスについて紹介したいと思います。
建物の平均寿命
財務省にて行われた「PRE戦略研究会」の資料によると、日本の住宅の平均寿命は、木造・鉄筋コンクリート(RC)造・鉄骨(S)造に関わらず概ね50年前後との推計が出されていました。また、一般的に言われている住宅の平均寿命は、これよりも大幅に短い、30年前後とも言われています。
これに対し、欧米諸国の住宅は100年を超える平均寿命を有しているとも言われています。
では、なぜここまでの差が生まれるのでしょう?
日本は地震が多いから?
確かにそれもあるかもしれません。しかし、一番大きな違いは建物に対するメンテナンスの意識であると考えられます。
欧米では住宅の価値はメンテナンスによって維持・向上するものであると考えられており、住宅主が積極的にメンテナンス・リフォームを実施しています。
このことにより、欧米諸国の住宅は100年を超える長寿となることができたのです。
どんなメンテナンスを行えばいいの?
建物の寿命を延命させる場合、一番重要となるのは構造躯体であると考えます。なお、構造躯体とは、建物を支え、地震や風などの外的な力も負担する建物の骨格となる部分を指します。この骨格が劣化・腐食してしまうと建物はたちまち弱ってしまうわけです。
では、この構造躯体=骨格だけをメンテナンスすれば寿命を延ばすことができるのでしょうか?
答えはNOです。確かに構造躯体=骨格をメンテナンスすることは非常に有効な手段であると言えます。
しかし構造躯体=骨格は外装(外壁※1・塗装など)・屋根や内装で覆われているため容易にメンテナンスを行うことができません。構造躯体=骨格を直接メンテナンスするには外壁・屋根や内装をはがす必要があるなど、非常に大規模な工事となってしまいます。
そこで重要になるのが構造躯体=骨格を覆っている外側の部分(外装・屋根)のメンテナンスです。構造躯体=骨格の劣化・腐食を進める要因は外部からの水の侵入や外気(炭酸ガス等)との接触などが主であり、外装・屋根はそれらの悪要因から構造躯体=骨格を保護する役割も持っているのです。
つまり建物の寿命を延ばすには、建物の外回り全体のメンテナンスを行うことが大切になります。
具体的には、外壁の塗装の塗り替え・シーリング※2の打ち替え、屋根防水の改修などが挙げられます。これらを行うことで、構造躯体=骨格の劣化・腐食を進める要因を排除しつつ、外壁・屋根の見栄えや寿命を延ばすことにもつながります。
ただし、耐震性に劣る建物や明らかに腐食・劣化が激しいと思われる建物の場合はさらに大掛かりな処置が必要となりますのでご留意ください。
※1 外壁には鉄筋コンクリート造の壁のほか、金属系サイディング、窯業系サイディング、木質系サイディング、ALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)、ECP(押出成形セメント板)、ラスモルタル(モルタル塗り)などがあります。
※2 シーリング(コーキングともいうが、現在はシーリングが一般的)とは、外壁の接合部(隙間)やサッシ周辺の隙間に充填する防水材のことです。
メンテナンスを行う目安は?
さて、ここまでは建物の外回りのメンテナンスの必要性をのべてきました。ここでは劣化の目安と素人でも行える非常に簡易的な診断方法をご紹介したいと思います。
まずシーリングについてですが、一般的にシーリングは築後7〜10年を経過すると異常が生じやすくなり、シーリング部分を指で押してみて硬いゴムのようになっていたら劣化しきっている状態ですので打ち替える必要があります。
また塗装は、塗料のグレードにより耐用年数が異なりますが、塗装を手のひらで触ってみて、手のひらに白い粉がついていた場合は劣化している可能性が高いです。
なお、外壁にひび割れ(クラック)が入っている場合は要注意です。表面の塗装だけが割れている場合もあれば、塗装の下地となっている外壁材自体もひび割れている場合があります。小さなものであれば大きな問題にはなりませんが、大きなひび割れを放置しておくと漏水や劣化を早める原因になりますので、一度専門家にみてもらうなどして対策をとることが望ましいです。
(雨漏りしている場合は当然ながらメンテナンスが必要です。)
まとめ
建物の寿命をのばすにはメンテナンスが必須になります。定期的なメンテナンスを行うことで、建物の資産価値を維持・向上させ、かつ長寿命を達成することも可能です。
築後10年以上が経過し、上記のような症状がみられる場合は専門家と相談してみてはいかがでしょうか?
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