相続した土地に建物を残すことのメリット・デメリット
土地を相続された場合、土地の面積や地目(種類)により固定資産税の額が大きく異なってきます。地目の中で最も固定資産税額が高いのは宅地となりますが、実は宅地は宅地でも建物の有無により固定資産税額が大きく異なってくることをご存知でしたでしょうか?実は建物の有無により1/6まで減税することができるのです。ですが、建物があるということはその分大きなデメリットを生じるということをご存知ない方が非常に多くなっています。
そこでここでは地目ごとの固定資産税額と、宅地における建物の有無による固定資産税額増減のカラクリと危険性についてお話したいと思います。
地目の種類
地目の種類としては、不動産登記上は23種類ありますが、固定資産税がかかる(一般の方が購入できる)のは以下の9種類となります。
区分 | 内容 |
宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地 (宅地は課税事務上「住宅用地」と「非住宅用地」に区分される) |
田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 (田は評価事務上「一般田」「介在田」「市街化区域田」に区分される) |
畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 (畑は評価事務上「一般畑」「介在畑」「市街化区域畑」に区分される) |
山林 | 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯溜池 |
鉱泉地 | 鉱泉温泉を含む。の湧出口及びその維持に必要な土 |
雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 ※駐車場宅地に該当するものを除きます。ゴルフ場、遊園地、運動場、鉄軌道等の用地は雑種地となります。 |
ただし、農地とは耕作が行われるための土地であり、地目が田畑であったとしても、現況が伴っていなければ固定資産税上は雑種地として扱われる可能性があります。
地目ごとの固定資産税
土地の固定資産税評価額の算定には主に路線価方式と倍率方式の2種類の算出方法があり、これらは路線価が設定されているか否かによって用いられる方式が異なります。
路線価方式
道路には路線価という、土地の評価額が定められており、路線価方式は土地と接する道路の路線価に土地の面積を掛け合わせたものが土地の評価額になります。
なお、接する道路の数が二つ以上の場合や土地の形状が複雑な場合には補正が行われ、適切な額で評価が行えるようになっています。
倍率方式
田畑や山林、一部の宅地などの、上記した路線価が設定されていない土地の場合には、登録免許税の部分で紹介した土地の固定資産税評価額に地域や土地の種類による掛け率を掛け合わせたものが評価額となります。
なお、上記はそれぞれ国税庁のHPで具体的な数値を確認することができますが、宅地は他の地目と比べて、特別に高い固定資産税となります。そのため、以下のような減税制度が導入されています。
建物の有無による違い
宅地でかつ住宅用地で実際に建物が建っている場合には原則として全ての方に減税が適用されることとなります。つまり、土地などを相続した場合に、建物が残っていると固定資産税を節約できる可能性があるということです。
郊外や街中であきらかに放置されているような住宅を見かけたことがある方も多いかと思います。これは相続はした土地の固定資産税が安くなるが故に建物を残したままにしているケースが多いかと思われます。
なお、土地の面積に応じて減額率が異なり、具体的には以下のとおりです。
- 小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分):固定資産税評価額×1/6
- 一般住宅用地(住宅1戸あたり200㎡超の部分※):固定資産税評価額×1/3
ただし、都市計画税の減税の場合には、減税率がそれぞれ上記の半分(1/6→1/3、1/3→1/1.5)となります。
これらの住宅用地に対する減税は住宅が建っている場合についてのみ適用となり、建物が解体された場合には適用外となってしまいます。
※住宅の総床面積の10倍までの面積までを限度とする
詳しくは以下の記事でもご紹介していますのであわせてご一読ください。
土地や残存する建物には管理責任がある
建物や土地の所有者は、その所有地でおきることに対し責任を持たなくてはなりません。と言っても、何に対して責任を持つのかわかりにくいかと思いますが、簡単に言うと他者に迷惑をかけることや危害がおよぶことがないよう管理する責任があるのです。具体的には建物の倒壊や放火などにより他者に被害がおよんだり、はたまた土地に入ってきてしまった子どもなどが怪我をしてしまった際の責任まで負わされてしまう可能性があります。なお、これは建物のない土地単体であっても同様に管理責任が生じることとなります。
また、建物は人が生活をすることで空気の入れ替えなどが自然と行われたり、雨漏りの管理などにより腐食の防止、歯止めとなっていますが、一度人が離れてしまうと、ものすごい勢いで劣化していきます。これは新築であっても同様ですが、築年数が古いほど勢いが強い傾向にあります。
そのため、相続時には一見健全に見える建物であってもたったの数年で倒壊寸前になってしまうことも十分にあり得ます。
相続された土地や建物は、数年以上、下手をすると10年20年放置されてしまうことが多いです。そんな長期間放置された建物の状態がどんなものであるのかは容易に想像でき、他者へ危害をおよぼす可能性は非常に高いと言えます。
そのため、土地や建物を相続された場合には半年に1回程度、長くとも1年に1回程度は訪問し、異常がないかの確認を行うべきでしょう。
まとめ
- 土地の固定資産税は宅地が特別に高い
- 宅地には建物がある場合のみ減税される制度がある
- 土地や建物は所有者に管理責任がある
- 管理できないものは取り壊すべき
相続した土地が遠いから、とか、忙しいからとか個人の都合で周りの方に迷惑をかけてしまうことは許されません。また、そのような理由で管理を怠った場合には、問題が起きたとしても擁護できる点がないため、後々莫大な出費となりかねません。そうならないためにしっかりと管理をする、管理が出来ないなら更地にするなど、自己都合を排除して考えていく必要があります。