防耐火構造・遮音構造の建築基準法違反について

界壁の未設置問題で大きな話題となった某社において、今度は防耐火構造および遮音構造において建築基準法違反の疑いがあるとして国土交通省から報道発表が出されています。建築基準法違反の疑いと言われてもいまいちピンとこない方が多いと思いますが、管理人としては非常に重大な問題であると考えています。そこで今回は、某社の防耐火構造および遮音構造の施工不備・不良問題についてお話したいと思います。

界壁の施工不備・不良問題については以下の記事でご紹介していますのであわせてご一読ください。

参考記事:界壁は何のためにあるの?手抜きはあり得るの?

問題となっている箇所

今回新たに問題となったのは、外壁・界壁・天井の3つの部位で違反の疑いが生じました。外壁と天井では防耐火構造の違反、界壁では遮音構造に関する違反の疑いとなっています。ここではそれぞれの部位についてどんな違反でどんな危険があるのか解説していきます。

外壁

問題の内容

外壁では1時間準耐火構造認定、45分準耐火構造認定および防火構造認定に関して、認定を取得した仕様とは異なる仕様で施工がなされておりました。具体的には下図のように、断熱材がグラスウールから発泡ウレタンになっていること、下地の間隔が広くなっていること、サイディングの裏面に下張(おそらくは強化石膏ボード)がないことが挙げられます。

 

出典:国土交通省HP

危険性

上記した内容はそれぞれ全てが防耐火性能を損ねるおそれがあるものとなります。防耐火性能は火災時に避難する時間を稼ぐための非常に大切な性能になりますので、この性能が損なわれているということは建物として大変に危険な状況にあると言って過言ではありません。

例えば断熱材はグラスウールと発泡ウレタンでは蓄熱性能や発火点などの違いから、火災による熱を蓄えてしまい、かつ、直接火に当たっていなくとも内部で発火してしまうおそれもあります。

また、外壁側の下張がないことや、下地間隔が広いということは、確実に防耐火性能を低下させる要因となります。サイディング単体では防耐火性能が足りないために、強化石膏ボードなどの下張を併用して防耐火性能を担保しています。特に、サイディング同士のつなぎ合わせ部分においては、ほぼ下張のみで耐えている部分もあるため、下張はないということは、つなぎ目部分の防耐火性能が限りなく低くなってしまっている可能性があります。

加えて、サイディングや強化石膏ボードなどのボード状のものは下地間隔を狭めることで火災(受熱)時の材料の反りを抑えてます。そのため、下地間隔が大きくなってしまうと、反りが大きくなり、すき間が生じ、防耐火性能が低下してしまう可能性が非常に高いです。

天井

問題の内容

天井では1時間準耐火構造認定の認定仕様と異なる内容で施工がなされておりました。具体的には、上張のロックウール吸音板が化粧石膏ボードに変わっている、もしくは化粧石膏ボードのみの施工となっていることが挙げられます。

出典:国土交通省HP

危険性

外壁の場合と同様に、上記の内容では防耐火性能を大幅に損ねる可能性があります。そもそも天井の防耐火性能と言われてもしっくりこないかと思いますが、実はこれは床+天井の防耐火性能のことであり、下階で発生した火災を上階へ伝えないためのものとなっています。そのため、天井の仕様が守られていないと床自体の防耐火性能を損ねることとなり、最悪の場合には床が燃えぬけてしまうなどのおそれがあります。

界壁(住戸間間仕切壁)

問題の内容

界壁においては、遮音構造を定めている告示(国が定めた仕様)と異なる仕様で施工がなされておりました。具体的には、遮音材として充填されているグラスウールやロックウールと呼ばれる繊維系のふわふわとした断熱材が、発泡ウレタンと呼ばれる泡が密につまった断熱材に置き換わってしまっています。

出典:国土交通省HP

危険性

壁の内部に充填されている断熱材が変わってしまうと、断熱材がもともと持っている遮音性能の違いは元より、壁全体の重量(密度)も変わってしまいますので、遮音性能が変わってしまう可能性が高いです。また、上記したとおり、グラスウールと発泡ウレタンでは蓄熱性能や発火点などの違いから、火災による熱を蓄えてしまい、かつ、直接火に当たっていなくとも内部で発火してしまうおそれもあり、界壁に求められている防耐火性能の面でも不安が残る内容となってしまいます。

まとめ

今回の問題ではいずれの部位においても、施工の手間を省くことと材料費をケチるといった、明らかに意図的な変更がなされています。そしていずれの仕様においても、変更後の仕様では建物の安全性や快適性を大きく損なうおそれがあると言えます。

某社は問題が連続して発生しているだけでなく、良い噂はほとんど聞かないような状況でした。企業として商売を継続していくために、ここでしっかりと膿を出し切り、企業体質を改めてもらえるとよいと思います。