集合住宅・戸建ての防耐火・耐震性に関わる不適切施工問題

プレハブの集合住宅や戸建てを手掛ける大手の建設会社で、認可を得た形状と異なる形で建物を施工していたことが発覚しました。これは建物の防耐火性能や耐震性に関して問題があるおそれのある内容であるため、補修工事が行われることが決定しています。

ですが、今回の問題においては何が問題で、どんな危険があるのか報道だけではわかりにくかったと思います。そこで今回は、大手建設会社で発生した問題について解説したいと思います。

防耐火性能の問題

今回問題の起こった建物は、鉄骨造の建物で、2階の外廊下を支える柱が認可を得た仕様と異なる形で施工がなされておりました。

鉄骨って火に強いんじゃないの?って思われる方も多いかと思います。

ですが、実は鉄骨は”燃えない”だけであって、”火に強い”というわけではないのです。

皆さんは鉄を溶かしている場面をTVなどでご覧になったことがないでしょうか?例えば刀鍛冶などでは、鉄を加熱して赤くなった状態で叩いている場面などをよく見かけるかと思います。

これは、鉄を加熱して柔らかくなった状態で叩いて・伸ばして・折り返してなどの加工を行っている場面で、1000℃を超えるような高温の中で鉄が溶けかけている状態となっています。

このように、鉄が熱で溶けてしまう場面は日常的に目にしたことがあるはずです。そして、建物に使用されている鉄であっても熱で溶けてしまうことに違いはなく、400℃で通常の強度の2/3、1000℃では強度が期待できないほどに弱くなってしまいます。

また、鉄の強度としては、加熱された際の強度の低下を見込んで設計がなされているわけではなく、健全な状態での強度で設計がされています。

なお、通常の火事であれば発火から数分で400℃を超え、10数分で1000℃を超えるような超高温になると言われてます。そのため、一たび火災が発生してしまったのであれば、鉄骨の強度はすぐさま低下してしまうでしょう。

そのため、鉄を建物の柱や梁などの重要な部分に使用する場合には、鉄に熱を与えないよう防護措置を行う必要があるのです。具体的には、鉄の周りに熱に強く、熱を伝えにくい材質のものを取り付けてあげることが一般的です。商品としては、ロックウールやケイ酸カルシウム板、ALCパネルなど、様々なものがありますが、雨などの影響がある屋外で使用されるものとしては、ALCパネルが多くなっています。これらは鉄骨の上に取り付けるものですので、基本的には鉄骨面は隠れてしまうこととなります。

ですが、鉄骨面がそのまま出ているからといって防護措置がされていないかというと、必ずしもそうではなく、耐火塗料と言われる熱で発泡する塗料を用いている場合には、鉄骨面が出ていたとしても十分な性能を有しているといえます。

なお、この問題については、鉄骨の表面に防護措置を追加してあげることで解決ができます。今回は屋外の鉄骨ですので、内装などを撤去する必要がなく、補修工事は比較的容易であると推測できます。

耐震性の問題

上記した鉄骨の防耐火性能に関する問題のほか、建物の基礎が認可を受けた仕様よりも高くなってしまっている問題も発生しています。

基礎が大きくなる分には何の問題もないと思われるかもしれませんが、基礎の高さが高くなることで、地震時に基礎に作用する力などが変わり、通常よりも大きな力が加わってしまう可能性があります。

そのため、地震時の建物の安全性について通常よりも劣っている可能性があることが問題視されたようです。

ですが、耐震性が最も不利となる建物で検討した結果としては、耐震性に問題がなかった旨の告知もなされております。しっかりと計算した上での告知でしょうから、おそらくは問題ないものだと思います。

なお、基礎の高さを補修するとなると非常に困難な工事となります。そのため、基礎の高さはいじらずに耐震性を向上させる補強工事が行われることが推測できますが、上記の鉄骨への防護措置と比べると非常に大変な工事であることに変わりはないでしょう。

まとめ

  • 鉄骨は火に弱く、防護措置が必要
  • 防護措置の追加は容易
  • 基礎の高さは建物の耐震性に関わる
  • 耐震性の補強は大きな手間がかかる

上記したこの問題は某社の界壁の未施工問題とは異なり、設計段階で手違いが発生していたもので、現場では設計図通りに施工した結果、不適切な施工となってしまったものです。設計者が自社の認可(型式認定)の内容を把握できていなかったことは大変問題ではありますが、その内容を通してしまった行政にも大きな問題があると言えます。

ここ最近立て続けに発生した集合住宅などでの問題で、今後は今まで以上に締め付けが厳しくなるのではないでしょうか。今まで以上に時間と経費がかかることとなるため、建設工程や費用に跳ね返ってくることも推測されます。

ですが、安全で安心できる建物を建設するのが、設計者・施工者の使命でありますので、多少の手間と費用が掛かったとしても、安全で安心な建物を提供してほしいと思います。

某社の界壁問題については以下の記事でもご紹介しています。あわせてご一読ください。

参考記事:界壁は何のためにあるの?手抜きはあり得るの?