建物の家屋調査【固定資産税】
建物の固定資産税は建物の構造や仕様に応じて決定されます。そのため、新築時にどんな仕様を選んだかが固定資産税の大小を分けることになります。そこで今回は固定資産税が決定する流れと節約するポイントについてお話したいと思います。
固定資産税は家屋調査で決定される
建物の建築が終わり、引き渡しがなされてから数ヶ月すると役所から家屋調査の連絡が入り、訪問日を日程調整がされます。その後、調整された日程で調査員が建物内外の仕様などを調査し、再建築評価点基準表を基に再建築評価点の点数付けを行っていきます。
再建築評価点
再建築評価点とは、建物の仕様や設備を基に、建物を点数付けした時の点数を指します。そしてその点数に再建築時の単価を掛け合わせることで再建築価格を簡易的に表すことができます。
再建築評価点を算出するための基準には、建物の構造により木造用および非木造の再建築評価点基準表があり、建物の用途に応じて木造では13種類、非木造では9種類の更に細かい分類がなされています。上記の家屋調査はこの基準表に応じて評価点を算定していくことになりますので、表に記載のあるものは固定資産税の対象となるということです。したがって、固定資産税額を抑えたい場合には、この表と照らし合わせ、各部位ごとに点数の低いものを選んでいけばいいのです。
なお、建物の固定資産税額は以下の式により求められます。
- 再建築評価点×評価点1点あたりの価格=再建築価格
- 再建築価格×経年減点補正率=固定資産税評価額
- 固定資産税額=固定資産税評価額×1.4/100(標準税率)+固定資産税評価額×0.3/100(制限税率)
なお、固定資産税については以下の記事でもご紹介しています。あわせてご一読ください。
点数により減額スパンが異なる
上記した計算式内の経年減点補正率は建物の築年数の増加に伴う劣化によって資産額としては小さくなりますので、その分を低減させるための係数となっています。
しかしながらこの数値は木造か非木造か、また、再建築評価点の点数によっても築年数の増加に対する低減率が異なってきます。
例えば木造の専用住宅で延べ床面積1㎡あたりの再建築評価点が52,999点と53,000点の2つで比較した場合、経年減点補正率が最大の0.2となるのには前者で15年、後者で20年となります。
たった1点の違いでも5年も異なることとなり、20年後の支払い総額はさらに大きく異なることとなります。下表では初年度の固定資産税額が減税抜きで20万円の場合の固定資産税額について比較してみたいと思います。
延べ床面積1㎡あたりの再建築評価点数別区分(抜粋) | |||||
53,000点未満 | 53,000点以上 83,000点未満 | ||||
経過年数 | 経年減点補正率 | 補正後の金額 | 経過年数 | 経年減点補正率 | 補正後の金額 |
0 | 1.00 | 20万円 | 0 | 1.00 | 20万円 |
1 | 0.80 | 16万円 | 1 | 0.80 | 16万円 |
2 | 0.75 | 15万円 | 2 | 0.75 | 15万円 |
3 | 0.70 | 14万円 | 3 | 0.70 | 14万円 |
4 | 0.66 | 13.2万円 | 4 | 0.67 | 13.4万円 |
5 | 0.62 | 12.4万円 | 5 | 0.64 | 12.8万円 |
6 | 0.58 | 11.6万円 | 6 | 0.61 | 12.2万円 |
7 | 0.53 | 10.6万円 | 7 | 0.58 | 11.6万円 |
8 | 0.49 | 9.8万円 | 8 | 0.55 | 11万円 |
9 | 0.45 | 9万円 | 9 | 0.52 | 10.4万円 |
10 | 0.41 | 8.2万円 | 10 | 0.49 | 9.8万円 |
11 | 0.37 | 7.4万円 | 11 | 0.46 | 9.2万円 |
12 | 0.33 | 6.6万円 | 12 | 0.44 | 8.8万円 |
13 | 0.28 | 5.6万円 | 13 | 0.41 | 8.2万円 |
14 | 0.24 | 4.8万円 | 14 | 0.38 | 7.6万円 |
15 | 0.20 | 4万円 | 15 | 0.35 | 7万円 |
16 | 0.20 | 4万円 | 16 | 0.32 | 6.4万円 |
17 | 0.20 | 4万円 | 17 | 0.29 | 5.8万円 |
18 | 0.20 | 4万円 | 18 | 0.26 | 5.2万円 |
19 | 0.20 | 4万円 | 19 | 0.23 | 4.6万円 |
20 | 0.20 | 4万円 | 20 | 0.20 | 4万円 |
20年間の総額 | 188.2万円 | 20年間の総額 | 213万円 |
このようにたった1点であっても総支払額は大きく異なります。そのため、再建築評価点はあらかじめ計算しておき、わずかな差で上位の区分になりそうであれば何かしらの仕様を変更し、点数を下げる工夫が固定資産税額の節約に効果的であると言えます。
なお、非木造の住宅の場合、軽量鉄骨造であれば木造と大差ない結果となりますが、重量鉄骨や鉄筋コンクリート造の場合には経年減点補正率が最大となるまでに40年~50年の期間が必要となります。これはマンションであっても同様で、マンションの固定資産税は低くなりにくく、木造の同等程度の仕様と比較すると固定資産税としては割高と言えるでしょう。
ただし、固定資産税とはそもそも資産としての価値があるか否かによって徴収額が上下するものであり、木造は比較的短い年数で価値が失われる(建物の寿命としても短い傾向)のに対し、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は長い期間資産価値が継続する(建物の寿命としても長い傾向)とも言えます。
固定資産税に関する細かい数値などは総務省のHPでご紹介されています。あわせてご確認いただければと思います。
あまり安い仕様は後悔のもと
上記したように、固定資産税額を抑えるには仕様を変更して点数を抑えることが効果的ですが、点数が低いものは購入時の価格も安いものとなります。
価格が安いものは安いなりの理由があり、性能、見た目、耐久性など何かしらで劣っていることが大半です。こと建築業界においては、性能などの割に無駄に高いものはあれど、安くて性能の良いものはありません。
固定資産税のために無理に仕様を変更すると、耐久性が低いためにリフォームの時期が早まったり、性能が低いために交換や補修などが必要となったり、はたまた見た目が気に入らないために取り替えるなどの弊害も予想されます。
そうした場合、固定資産税の差額よりもはるかに大きい金額が必要となってしまい、本末転倒な結果になりかねません。そうならないためにも固定資産税だけを追い求めることは避け、固定資産税と仕様のバランスを見極めながら妥協点を探ることが最終的な満足につながると言えます。
まとめ
- 建物の固定資産税額は建物の仕様により異なる
- 固定資産税額は再建築評価点の低い仕様を選ぶと抑えられる
- あまり安い仕様は安物買いの銭失いになりかねない